矯正中はなぜ口臭が発生しやすいのか?原因と対策【前編】
2025年09月22日
こんにちは、スウェーデン矯正歯科です。
矯正治療を検討している方の中には、治療中の「口臭」を気にする方もいます。
実際、普段は気にならない人でも、矯正装置をつけ始めてから口臭を自覚するケースは珍しくありません。
なぜ矯正中は口臭が強まりやすいのでしょうか。
その背景には、矯正装置によって変化する口腔環境や、細菌の活動といった複雑な要因が絡み合っています。
今回は「原因」に焦点を当て、なぜ口臭が発生しやすいのかみていきましょう。
矯正中の口臭の原因

矯正中に口臭が発生する原因には、次のようなものが考えられます。
原因①食べかすや歯垢が残っているから
矯正中の口臭の最も大きな要因は「食べかすや歯垢」です。
特にブラケット矯正では、ワイヤーやブラケットの隙間に食べ物が引っかかりやすく、通常の歯磨きだけでは落としきれない部分が増えます。
結果として磨き残しが蓄積し、口臭の温床になります。
食べかすや歯垢は、やがて細菌の栄養源となり、揮発性硫黄化合物(VSC)を発生させます。
これは玉ねぎや硫黄のような刺激臭を持つ成分で、口臭の主因とされています。
通常であれば、歯磨きをすることや、唾液の作用などによってある程度は洗い流されます。
しかし、矯正装置があることで汚れが残りやすくなり、細菌を増やしてしまうのです。
原因②唾液の流れと自浄作用の低下
口腔内の健康を守るうえで欠かせないのが「唾液」です。
唾液には大きく分けて3つの働きがあります。
・食べかすを洗い流す「自浄作用」
・抗菌物質による「細菌抑制作用」
・酸を中和してむし歯を防ぐ「緩衝作用」
これらの機能は、むし歯や歯周病だけでなく、口臭を防ぐ上でも非常に重要です。
しかし、矯正装置をつけると、舌や唇の動きが制限され、唾液が口全体に行き渡りにくくなります。
特に口蓋側に装置がついている場合や、長時間マウスピースを装着するケースでは、唾液の循環が滞りやすい傾向があります。
その結果、細菌が繁殖しやすい環境が作られてしまうのです。
原因③口呼吸による乾燥
矯正中は装置の違和感や鼻の通りの影響から、無意識に口呼吸になる方もいます。
鼻呼吸に比べると、口呼吸は口腔内を乾燥させてしまいます。
湿度の高い環境を好む細菌は、乾燥した状態の口腔内では逆に減るのでは?と思う方もいるかもしれませんが、実際はその逆です。
乾燥すると唾液による抗菌作用が弱まり、細菌が繁殖しやすくなるのです。
乾燥状態では、特に朝起きた直後に強い臭いを感じる人が多く見られます。
これは「寝ている間の口呼吸」と「唾液分泌の減少」が重なり、口腔環境が最も不安定になるためです。
原因④歯肉炎や口内炎によるもの
矯正中は、ブラケットやワイヤーが歯肉や頬の粘膜に刺激を与えることで、口内炎や歯肉炎が生じやすくなります。
炎症が起きると、そこに細菌が集まりやすくなり、炎症部位から発生するにおい物質が口臭の原因となります。
特に歯肉炎では出血を伴うことが多く、その血液成分を栄養源として嫌気性菌(酸素の少ない環境を好む菌)が増殖し、強い臭いを放つことがあります。
原因⑤マウスピース矯正特有の要因
マウスピース矯正は「食事や歯磨きの際に外せる」ため、一見清潔に使える装置だと思えるかもしれません。
しかし、長時間口内に装着することで、内部が蒸れて細菌が繁殖しやすくなるのも事実です。
また、洗浄が不十分なマウスピースをそのまま使い続けると、装置自体が臭いの発生源となります。
透明なマウスピースはきれいに見えても、細菌バイオフィルムが形成されていることがあり、これが強い口臭の原因になることも少なくありません。
今回はここまで。
矯正中に口臭が発生しやすい背景には、 食べかすの停滞・唾液の流れの低下・乾燥・炎症・マウスピースの不衛生など、複数の要因が重なっています。
これらは患者さん自身のケアと歯科医院での管理によって改善が可能です。
次回は、口臭のセルフチェック方法や具体的な予防・対策法について詳しく紹介していきます。






